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第4回:校正者の仕事がなくなる? 「校正の需要拡大と課題」

みなさんこんにちは、文字工房燦光の下重一正です。

前回、第3回の記事「情報流通量の増大と信頼性」では、
Webを介した情報流通量の増大と情報発信者の責任について考察しました。

第4回「校正の需要拡大と課題」では、
情報流通量の増大に伴う校正需要の拡大、そしてその課題について考えてみます。

これまでの記事では、校正対象の多くが、本屋に並ばない情報、つまり値札がつかない情報であること、そして、情報の流通量は増大し続けており、その発信者の責任が問われるようになったこと、これを根拠に、校正の需要が減少していないことをお話ししてきました。

それでは、これからも校正の需要は拡大し続けるのか、という問題を考えてみます。
企業が自社商品やサービスの拡大に向けた情報発信を行ううえで、その信頼性向上やブランディング、場合によってはコンプライアンスの観点などから校正による情報の品質確保が求められます。

ただし、校正という仕事は、企業の財務上「費用」とみなされます。
当然、費用が少なければ利益が増大しますので、企業は費用の削減に努めます。
つまり、発信すべき情報(流通量)が多くなり、かつその信頼性(発信者の責任)が求められる一方、費用となる校正の予算は、できるだけ削減しなければならない、といった構図が存在します。

たいてい、企業は業績が良いタイミングで、より積極的に情報を発信し、自社製品、自社サービスの拡大を狙います。

その構図から校正の需要を考えた場合、経済活動が今後も発展するのならば、同じように校正の需要も広がっていく可能性が高い、というのが私の結論です。

事実として、弊社に限らず、校正を専門としている会社の過去十数年の売上の推移をみると、それは日本全体の「広告宣伝費」の推移と酷似しています。

そしてその推移は、リーマンショックや東日本大震災、コロナショックでの落ち込みを除き、年に数パーセント程度の成長率で継続的に伸長している、といった内容です。

逆の見方をすると、今後様々な要因から、日本の経済活動が停滞し、減少に転じる場合、校正の需要もそれに伴い縮小していくはずです。

このように、未来の校正需要とその懸念は、「校正需要全体」としては、「出版不況」に左右されるものではなく、「経済活動」に依存したものだともいえます。

「校正需要全体」としては、決して校正者が悲観する必要はないと考えていますが、それぞれの校正者が専門的に扱う各分野を考えた場合、その将来的な需要には大きな差がでてくるものと考えます。

一例として、弊社の中で大きく売上が伸びているジャンルがあります。
それは「投資家情報」と「ヘルスケア(主に製薬)」の分野です。

その校正需要増大の理由を考えてみると、ここ十数年の間での社会的な変化が影響しています。
「投資家情報」であれば、Webの発達によって個人の投資家でも容易に取引が行えるようになり、

さらに、個人の投資を政府が推進したことで個人投資家の数が大幅に増え、それに伴い、より高品質で大量の情報が求められたことがその理由だと考えられます。

「ヘルスケア(主に製薬)」であれば、多くのバイオベンチャーの参入や、DXやAIなどによる技術革新により、その創薬スピードが劇的に改善されたことで、医療機関や患者に提供すべき情報が増大したことがその理由です。

ただし、「出版不況」も校正需要に当然大きな影響を与えています。

つまり、“校正業界全体としての”校正需要と“専門的なジャンル毎の”校正需要とでは、将来的に大きな差が発生する、ということです。

本が好きだから校正者を目指した、新聞校閲にあこがれて校正者を目指した、という人はいても、決算短信を読むのが好きで校正者を目指した、という人は多くないと思います。

校正者を目指す動機は人様々ですが、校正者としてどのような道を進んでいくべきなのか、という問いは、常に意識し続けなければならない課題だと考えます。

それでは次回、「校正とAI」について考えてみたいと思います。


「校正者の仕事がなくなる?」(全6回)
第1回:校正者の仕事がなくなる? 「校正者の仕事がなくなる?」
第2回:校正者の仕事がなくなる? 「校正の領域」
第3回:校正者の仕事がなくなる? 「情報流通量の増大と信頼性」
第4回:校正者の仕事がなくなる? 「校正の需要拡大と課題」
第5回:校正者の仕事がなくなる? 「校正とAI」
第6回:校正者の仕事がなくなる? 「文字校正から情報校正へ」

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